腹黒さと塩辛さは機会均等 〈前編〉 | 幕間だけの天井桟敷

幕間だけの天井桟敷

  
  適当な湯加減で書いています

幕間だけの天井桟敷-富山1

ちょっと前の話になるのだが、仕事がまさかの17時30分というミラコーな時間にフィニッシュした日があったので、その足で大阪駅から特急に乗って富山まで行くという、かなりディープな"いい日旅立ち"を開催してみた。

個人的には、こういう後先かまわず勢いに任せてノーフューチャーな事をするのが結構好きでして。
だからなのか、気の知れた友人や諸先輩方からは、よく「もっと将来のことをしっかり考えなはれ」と事あるごとに小説教されていた。まあ、そう言われても、もうすでに「将来」だしなぁ。

そんな与太話はさておき、その日(金曜日)は富山駅に着いてから、あらかじめ特急に乗る前に連絡していた富山在住の友達と飲み屋へGO。ひさかたぶりの再開なので、えらい盛り上がった。
こんなビックリハウスみたいな登場をすると、向こうもそれなりに驚いて喜んでくれるので、いちおうハウス側としては、来て良かったかなと思えるもんなのである。それでも教科書どおり「もっと将来の事しっかり考えなよ」と叱咤激励は頂戴しましたが。

長尻しつつもたらふく飲んで食べて、飲み会は解散。
友人と別れ、滑り込みで予約したホテルへチェックイン。
さて、ここまでは良いのだが、明日の土曜日はどうするのかというとこれまた何にも考えてない。

富山と言われ思いつくものを考えてみる。
薬売り…
蜃気楼…
あっ!富山ブラック!

そうなのだ、ここ富山は「富山ブラック」という泣く子もさらに泣き倒すご当地ラーメンの申し子が君臨してるではないか。そう考えると、もう食べずにはいられない。

完全にスイッチONになった僕は、翌朝は颯爽と起床し、富山市内のラーメン屋を早速マーケティング。

タクシーの運ちゃんを捕まえ、いろいろ情報を聞き出してみるに、どうも「大喜」というお店が、いわゆる「富山ブラック」という渓流の最古参の一つであり、ハードコアなDNAを今でも大事に受け継いでいるらしい。

「かんなり塩辛いぞー、覚悟しな」

こう言ったタクシー運ちゃんのデビリッシュな含み笑いがなにやら嫌な予感を抱かせる。
なにぶん僕はラーメン系については、あまり"引き"が無い。いや、無い。
去年の秋に名古屋に行った時だって、地獄のような激辛ラーメン を食べて記憶が初期化されたという微笑ましい逆スイートメモリーもすでに通過儀礼済みである。しかし、そんなトラウマに葛藤しながらも、僕だってそれなりに全国各地の手ごわいラーメンを食べ歩き、免疫だって相応にはあるはずだ。
ここはむしろ自信と鷹揚さを携えて、富山ブラックの1杯や2杯などちょちょいと軽く捻りつぶしてやるぐらいの余裕さが、アラサー世代の漢のマストスペックとして欲しいところだ。

そうこうするうちにお店に到着。


幕間だけの天井桟敷-富山2

うむ、店のナリ自体はふつーだ。
いかにもな怪しさやインチキくささは全く感じられない。
僕は店のドアに手をかける。

「どっからでもかかってこいやぁ!」

あえての強気モードで暖簾をくぐってみたものの、結果的にまたしても僕は驚愕の世界へとバッドトリップさせられたのである。


※後編へ続く