世界でいちばんアツい夏の終わり | 幕間だけの天井桟敷

幕間だけの天井桟敷

  
  適当な湯加減で書いています


もはや不定期にしか更新しないこのブログ。

久々にまとまった時間があったので、気まぐれに書いているわけなのだが、いきおい何か書こうとしても、マトモなトピックすら思いつかない。


まあ、私ほどダメ人間っぷりが濃縮果汁還元された人間もいないので、そういう意味では安心と信頼の通常営業。
伊達や酔狂で36年間もおっちょこちょい人生を歩んでるわけじゃないゆえ、もはや感覚が麻痺してノーマルな人生ってどこにあんの?と、皆目わからなくなってしまう。

仮に「全日本ダメ人間コンクール」とかいうのがもしあったとしたら、もう私なんか、各方面から白羽の矢が立ちすぎて、すぐさま全身蜂の巣にされていることでしょう。
というわけで、そんな悲喜こもごもの反省をしつつ、蜂の巣と化した穴だらけの身体と人生を抱えながらトボトボ歩いていると、怪しげなラーメン屋が降臨した。


のんき屋2

うわっ、これは衝撃的!

この建屋の香ばしさ、完全に時空が歪んでいる。
さすがに地球上で2番目にポンコツな僕も驚かざるをえない。そしてラーメンではなく「ンメーラ」。時空が歪みすぎてもはや別次元。アナザ・ディ麺ション。
ここでラーメン食っちゃうと、ポンコツランク2番から1番に登り詰めて、文字通りホントに壊れてしまいそうだ。

それに「地球上で2番目にうまい」という、謙遜なのか不遜なのかよくわからない、いたいけな謳い文句も胸の深いところをくすぐってきはる。

実は本当に地球NO.2なうまいラーメンなのか、あるいは、「あー、この地球上にはラーメン屋って2軒しか無かったのね」と思ってしまうのか、身も痺れるアルテマな2択。

前者なのか、後者なのか?これはンメーラ好きとしては行きたくなる。いや、むしろこんな面白物件はそうそうお目にかかれないので、地球上で2番目の速さで勝手に身体が店に吸引されていくと表現したほうが正しいと思う。


のんき屋3

吸引途中に、サイドからお店を見てみる。おぉっ、店の奥行きがこれまた薄すぎるではないか。これも地球上で2番目の薄さなのだろうか。

ラーメンのスープも地球上で2番目に薄っぺらかったらどうしよう…と余計な心配をしつつ、意を決して半泣きになりながら、入り口らしきドアを開けていざ入店!


ドアを開けてみると、眩暈を覚えるほどの高温の室内。そして、即座に自分のメガネが真っ白に曇り視界がゼロ化するというおまけイベントも発動。なんというスパルタンな熱帯雨林気候、いろんな意味での「マイナスイオン」が、こん限りあふれてらっしゃる。


ふと目線を下にやると、ほんとにすぐ目の前にいきなり椅子+カウンター。ゆとりを感ゼロのウェルカム加減。その椅子と入り口ドアの間は人っ子一人すら満足に通れない壊滅的な狭さ。

つまるところ、どこかのドアを開けた瞬間に、己の席次がオートマチックに決まっちゃうという、新しいタイプの椅子取りゲームみたいなもの。全てが斬新すぎて奮えが止まらない。


よく飲食店のアピールで、

「お客様と店員の距離が近いアットホームなお店です!」

みたいなフレーズがあるが、それはいわゆる心理的な側面・距離感を売りにしてるのであって、こんな爆発的な物理距離の近さでそのアットホーム感をゴリゴリとアピールしてきよるとは末恐ろしい。


さらには、見渡せば、黒く煤けたカウンター、悠久の時を経てヴィンテージ化されたコショウ(胡椒)の容器、中身の入ってないセピアがかった色の箸袋。もう、もはや老舗というより「魔界」


次から次へと襲い掛かるお店のアヴァンギャルドなスペックに内心ビビりながらも、

「2番じゃダメなんですか?」と言った、いつかの某議員さんの様なクールさを飽くまで装いながら、サクッと着席して「ンメーラ」をオーダー。


そう、ここは「ラーメン」ではなく「ンメーラ」ときちんと発音。これが正解。コアなラーメン好きの、漢としての流儀である。


店主には何もツッコまれず、若干のインターバルを置いてから「はいな」とだけ言われる。心なしか、一瞥されて眼鏡の奥がギラリと鋭く光ったようにも見えた。
そうこうすると、3分もしないうちにンメーラが着丼。


のんき屋4

不必要な緊張感を胸にたぎらせながら、麺とスープをすすってみる。

うーむ、地球上で2番目にうまいと標榜するだけあって、確かにオイリーで、物凄い勢いでスープの塩気が蜂の巣まみれの己の胸に染み渡る味わい深い一品。

舌をつんざくようなケミカルな刺激感が何とも言えない。


ほとんどサブリミナルな状態でそのままンメーラを吸引していると、常連とおぼしき50代メンズが入店、そして彼のメガネも、やはり一瞬で真っ白に曇った。もうここはパワースポット。
 

いや、しかし、ラーメン屋を1300軒以上訪れた私でさえも、これほどまでのインパクトあるお店は初めて。お勘定を済ませたのかすらも思い出せないぐらいの放心状態で、気づけば夜の帳が下りた博多の街を僕はフラフラと歩いていた。


そんな地球上で2番目にディープな経験の余韻に浸りながら、後日に別の街を歩いていると、ついに「1番のラーメン屋」まで見つけてしまうという負の連鎖が、こういう時に限ってしっかり発生しちゃうのである。


フレンド

まあ、ここもしっかり食べたわけですが、宇宙一おいしいかどうかは、また別の話。