「人世の総決算 何も謂うこと無し」
「笑って散る」
「私の心は日本晴れ」
鹿児島の知覧特攻平和会館に所蔵されている特攻隊員たちの遺書にはこう書かれている。
「しっかり生きろ 哲也 立派になれ」
「本当に今までは幸せな人生だったと感謝している」
日本航空の安全啓発センターに保管されている1985年の御巣鷹墜落事故の乗客の遺書にはこう書かれている。
「この世で一番小さな時計は"まだ生まれない赤ちゃんの心臓"だと思うことがあるのです」とは、今は亡き寺山修司の言葉。
たくさんの"小さな時計"や"大きな時計"が、終戦から65年という歳月の中で、悲喜こもごもの時を彩りながら、それぞれの歴史を刻んでいった。
だからこそ生きてきた年月に比例して、時計の重みを強く噛みしめるようになるのは僕だけではないと思う。
その歴史の中では、生死の淵から辛うじて助けられた小さな時計もあれば、もう一度生きてみようと誓った大きな時計もあっただろう。
一方で、冒頭で挙げたような、無情にも志半ばで止められた時計、最期まで人の幸せを祈って逝った時計があったことも、決して目を逸らすことはできない時代の証左である。
夏の強烈な日差しに相まり、人々の情熱が滾る騒がしい8月。
そしてこの国の歴史に冷たい影を落とすことが多かったのも8月。
65回目の終戦記念日を迎え、
平和と安全を祈りながら、刻まれた「時計」の重さを改めて噛みしめる。